
2夜にわたって、ダイダロスウォレット復元詐欺の事例を紹介しました。
本日、最終編です。
私たちは今、「証拠が残らない詐欺」とも言うべき、非常にグレーな領域と向き合っています。
暗号資産。それは、銀行を通さず、個人で価値を保有し、移転できる自由の象徴である一方、すべてが自己責任の世界でもあります。
そして今回、S氏によって仕掛けられたこの“復元詐欺未遂”は、仮に被害が実際に発生していたとしても、「詐欺」として立件することは非常に難しかった可能性があるのです。
なぜか。そこには、法律というフィルターでは捉えきれない、「グレーゾーン」が広がっていたのです。
「パスフレーズを失くしただけです」と言われたら、何が証明できるのか
仮にこの事件が、Yさんの冷静な判断と相談がなければ、2,000万円の被害に発展していた可能性は高かったでしょう。
ですが、仮にそうなっていたとしても――
「S氏を詐欺で訴えて、逮捕・返金できるか?」というと、話はまったく別です。
なぜなら、S氏がこう証言すればどうなるか?
「私は本当にウォレットを復元したかっただけです。
善意でYさんにお願いし、資金も返すつもりでした。
ただ…肝心のパスフレーズを失くしてしまった。それだけなんです」
こうなると、法律上は「詐欺罪」の構成要件を満たさない可能性が高くなるのです。
詐欺罪のカギは、「だます意図」があったかどうか
詐欺罪(刑法246条)は、以下のような要件をすべて満たす必要があります。
1.他人を 欺く行為(欺罔) があったか
2.相手がそれを信じて錯誤に陥ったか
3.財物を自主的に交付したか
4.それによって財産が 不当に移転したか
つまり「最初からだますつもりだった」と立証しなければ、詐欺罪にはならないのです。
そして、「パスフレーズを失くした」「復元できなかった」「お金は返すつもりだった」とS氏が一貫して主張すれば、それを覆すのはほぼ不可能。
しかも、暗号資産の世界には「送金ログ」は残っても、「誰が、どんな意図で、どのように操作したか」という“心の動き”まではログに残りません。
つまりこの詐欺は、「意図の証明」ができないことを見越して設計されていた可能性があるのです。
つまりこれは、「グレー詐欺」なのです
私たちが今、目の当たりにしているのは、
「詐欺かもしれない」
「でも詐欺だと証明できない」
「だから処罰もできない」
そんな、証明不能な詐欺です。
ウォレットの中身は確かに存在していた。
復元もされた。
でも、送金はなぜかできなかった。
そして、肝心のフレーズは失われていた――
本当に?
偶然?
それとも…?
法律は、白と黒をつけるためのツールです。
ですが、そこに「グレー」があれば、法は機能しません。
だからこそ、「未遂」で防ぐことがすべて
今回のYさんのように、「ん?」と違和感を覚えた段階で、第三者に相談するという行動は、最大の防御策です。
S氏のような人物は、もはや「プロ詐欺師」ではなく、「詐欺かどうか判断させないグレー戦略家」なのかもしれません。
そして、彼らはこうした“絶妙な逃げ道”を設計してくる。
だからこそ、被害が起こる前に、止めるしかないのです。
最後に|「まさか自分が…」の一歩手前で
ウォレットの復元。
パスフレーズの紛失。
取引先への急な送金依頼。
身分証の提示。
そして「倍返しするから貸してくれ」
この流れを、ぜひ記憶しておいてください。
もし、どこかで似たような展開が始まったら、まずは深呼吸して、一度、私たちにご相談ください。
実際に送金してしまった後では、できることが極端に減ってしまいます。
だからこそ、その一歩手前で止まる勇気が、あなたの資産を守る最後の盾になるのです。
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